M&A減損 世界で16兆円 18年度、危機後最大 価格高騰、景気減速で裏目(日経新聞)
[要約]
M&Aに絡むのれんの損失が急拡大している。
2018年度は世界で約1550億ドルと前年度比66%増加し、08年の金融危機時の2300億の後、最大となった。
世界的なカネ余りでM&A価格が高騰していたところに、米中貿易摩擦などを受けた景気減速が重なり、買収した企業の業績が想定より低迷しやすくなっているためだ。
ただ景気の減速の懸念ほど状況は悪くない。それでも減損が急増しているのは、それ以上に割高なM&Aが増えているからだ。
買収代金が買収先の利益の約15倍ほどにも達している。
それによりM&Aの割増代金を示し、損失のもととなる「のれん」は7兆ドル超に積み上がり、損失がさらに膨らむ恐れが否定しきれない。
のれんでは現金流出は起こらないが、自己資本が低下し格付けの低下や資本調達コストの上昇を招く。
それにより企業の設備投資を妨げてしまう悪影響も出かねない。
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190719&ng=DGKKZO47486590Y9A710C1MM8000
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なぜここまで買収額が上昇してしまっているのか。それはM&Aの必要性が今まで以上に認識され始めたからだ。それが件数にも繋がってきていると考えられる。
なぜ買収先の資本以上に買収額を支払うのかというと、その企業に将来性が期待され、今以上の収益が見込まれるからである。
今までであれば将来性を感じられる事業に関して、自社開発し優位性を持とうとしてきた。
しかし今では優れた先端技術を持っているベンチャー企業や中小企業がとても多く存在している。それらの価値を認め始めたのかもしれない。
このようにベンチャー企業に対してのM&Aが重要視され始めるとどうなるのか。
1つは起業家の目標に大きくかかわってくることが考えられる。
今までは起業して、最終的な目標はIPOにより自分の株式を売ることにある。それにより多くの資金を得ることが出来た。
しかしこれからはM&Aをされてexitすることが目標になるのかもしれない。そのために如何にして先見の明を持って、将来企業に必要にされる事業ができるかに重点が置かれるようになる。
アメリカではもともと後者が主流であった。それに日本のビジネス文化が追い付いたという形になるだろう。
もう1つ考えなければならないのはクロスボーダーM&Aである。
先端技術を得ようとする企業は世界中に存在する。M&Aの過熱によって争奪合戦となるだろう。
すると企業の「見る目」というのが大事になる。どのシステムがこの先重要で、必要とされるかを大量の企業の中から見極めなければならない。
それを読み切った企業がこの先数年を制するだろう。