かかりつけ医 定額制に 厚労省検討、過剰な診療抑制 登録以外は上乗せ(日経新聞)
[要約]
厚労省は患者が自分のかかりつけ医を任意で登録する制度の検討をしている。
日本では諸外国と比べ、1人が年間に医療機関を受診する回数が平均12.8回と非常に多く、これが医療費の増大へつながっている。そこで、公的医療保険関連法について検討を始めたのだ。
まず、大病院との連携や、診療時間外の対応といったような要件を満たす医療機関をリストアップし、患者はその中からかかりつけ医を選ぶ。
そこで、患者は月単位定額で、何度受診しても可能になる。そのため、過剰医療の提供を防ぐことが出来、医療費が削減されるようになる。
また、軽傷でも大病院を受けるという患者を減らす効果もあるという。
ただし、日本医師会が強く反対していることもあり、調査は難航するとみられている。
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190625&ng=DGKKZO46515120U9A620C1MM8000
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この記事を読んでみて思うことは、政府の思惑通りには上手くいかないだろうということだ。
この制度によって、得をするのは政府と患者だ。
政府にとっては、定額制により月々の医療保険の金額を減らすことができるだけでなく、支出をある程度予測することが出来るようになるため、予算計画を立てやすくなるという一面もある。
患者にとっては、お金を気にせず気軽に病院に行くことができるようになり、健康意識が高まる。いくらかかるか分からない病院が、定額になるのは心理的、経済的な不安が非常に緩和されて良い影響になると思われる。
問題はやはり医師側である。多くの問題が露見するだろう。
①医師の収入の問題
②医師不足の問題
③要件を満たすことができない医療機関の問題
軽く考えただけでも、このような問題が挙げられる
①医師の収入の問題
定額制となるということは、医師の収入もある程度定額制となるということだ。
忙しくても暇でも同じ収入ということだが、今の状況を考えると、いつ行っても混んでいて到底暇には思えない。
同じ患者を何度見ても定額というのだから、一人ひとりに対する診察の回数ももちろん増えるだろう。しかし、医師側にはなにも収入にならない。ただ負担が増えるだけになる。
また、診察が難しい病気であっても、軽い病気であっても同じ収入であり、医師のモチベーションにも関わってくる。そのため、診察の質の低下も考えられるのではないだろうか。
②医師不足の問題
この先、少子高齢化の進行によって医師不足になるという試算がかなり前からされている。
単純に高齢者が増加することにより患者数が急増されることが予想される。
それに加え、医師が足りない状態にも関わらず、診察数が増えることが予想され、労働環境が非常に悪くなるということが懸念される。
若い医師をたくさん育成すればよいとの見方もあるが、医師の質を確保するためにも中々簡単とは言えない。
③要件を満たすことが出来ない医療機関の問題
厚労省はかかりつけ医の要件として、大病院との連携や、診療時間外の対応などを挙げている。
ただ、その要件を満たしたくてもできない医療機関もたくさんあるのではないか。
例えば、個人経営のクリニックなどは中々診療時間外の対応をすることが難しい。また、医師数が足りていない医療機関も時間外に医師が即座に対応できるかどうかも怪しい。
また、大病院との連携についても、不可能な理由があるのかもしれない。
するとどうなるか。
要件を満たさない医療機関の患者数が激減し経営を圧迫する。それだけでなく、周りの医療機関に患者数が流れ込みパンクするという可能性まであるのだ。
このような懸念点から、うまくいくとは考え難い。
将来の医師を育てなければならない状況で、医師を魅力的な職業にするべきはずが、逆のことをしてしまってどうするのか。